Work
特集 Work vol.18
知的障がい者雇用の「不」を解消!一人でも多くの人に活躍の場を
株式会社ファンケルスマイル

化粧品や健康食品で知られる株式会社ファンケルの特例子会社である株式会社ファンケルスマイルが横浜市栄区にあります。ここで働くのはそれぞれに障がいのある99人の社員と支援や指導にあたるスタッフです。本社をはじめ、工場や物流センターなどファンケルグループ内の8拠点で様々な業務に取り組んでいます。2021年からは社屋のエントランス付近に工房を設け、独自の製菓事業「スマイルスイーツファクトリー」をスタート。発芽米粉を使ったグルテンフリークッキーの製造、販売にも挑戦しています。障がい者雇用への思いや業務の様子を取材しました。

社員の9割が知的障がい者。様々な業務を経験し、適性のある仕事で活躍
ファンケルスマイル設立のきっかけは、ファンケル創業者の池森賢二氏が、地域にある重度心身障がい者施設を訪れたことでした。「懸命に生きる障がいのある人たちのためにできることはないか」と考える中で、身体障がい者に比べて知的障がい者の企業での就労機会が少ないことを知ります。世の中の「不」を解消することを創業理念に掲げている企業として、1人でも多くの障がい者が活躍できる場を作ろうと、1999年にファンケルスマイルがスタートしました。設立から26年目となる現在、雇用している障がい者は99人。うち89人が知的障がい、6人が身体障がい、4人が精神障がいを持ち、約4人に1人が重度の判定を受けています。

業務はファンケルの化粧品やサプリメントの包装、顧客向けのダイレクトメールの発送、不要紙のリサイクル作業、会議室のセッティング、清掃など幅広く、中には本社や県外の工場などで行うものも。入社後は、様々な業務を経験しながら適性のあるものを見つけ、個々の特性に合わせて用意された環境の中で集中して仕事に取り組んでいきます。「いろいろな業務があるため、ずっと手元で行う作業に携わっていた社員が物流に興味を持って、フォークリフトの免許を取ったこともあります」と語るのは簑島修社長。社外に出て人と関わるクッキー販売などの業務はハードルが高いと感じている社員が多いものの、実際に経験した仲間からの報告を聞いて「挑戦してみたい」と手を挙げる人も徐々に増えてきているのだそうです。
「人間力」を高め、一人の社会人として「自立」できるように支援
ファンケルスマイルが目指すのは、障がい者が一人の社会人として「自立」することです。簑島社長は「様々な人と交わりながら日々を過ごし、末永く安定して働いて給料をもらって生活していくことが社会的自立だと考えています」と話します。
そのために必要な力として、日ごろ意識しているのが「人間力」です。一言で「人間力」と言っても、早寝早起きなどの日常生活スキルをはじめ、健康管理や食事、服薬などを自分で行う能力、対人スキルなど、そこには多様な要素があります。同社では、社員が生活するグループホームなどを訪問したり、支援機関や産業医と連携したりして個々の状況をつぶさに把握し、支援スタッフ同士ができる限り情報を共有しています。それに加え、コミュニケーションなどを学ぶ勉強会や定期的な面談を実施。早期に困りごとの芽を摘んでそれぞれに必要な支援や指導をすることで、社員一人ひとりの安心感を高めています。「『人間力』は仕事をする上でのベースとなるものです。その先に会社のルールを守ることや、仕事上の技術を身に着けることがあります」と簑島社長は語ります。

高齢の障がい者でも働きやすい「スマイルスイーツファクトリー」
会社が成長していく中、2021年11月から新たな挑戦がスタートしました。菓子の製造・販売を行う「スマイルスイーツファクトリー」です。事業開始の背景には会社設立から20年を超えて、長年在籍している社員も増え、徐々に高齢化が進んできたことがあると言います。簑島社長は「初期から在籍している人は50代になり、体力はあるものの手元が見えづらいなどの加齢の影響が出てきました。クッキーの製造であれば生地の型抜きを失敗してもやり直すことができます。高齢の障がい者でも働きやすい環境を考えた結果、この形になりました」と説明します。また、クッキーの生地には栄養価の高い玄米を発芽させたファンケルの人気商品「発芽米」の粉末を使用。ファンケル総合研究所に在籍する管理栄養士がレシピを考案するなど、ファンケルが持つ強みも生かすことができました。


現在は会社設立時期に入社した人を含む社員7人と支援スタッフ4人が週4日製造にあたっています。作業は発芽米を機械で粉砕し、ふるいにかけることからスタート。それを使って生地を作り、型抜きをして焼き、検品、袋詰めをして商品になります。味はプレーン、チョコチップ、ナッツミックス、チーズの4種類。1枚ずつ販売する大判サイズと、小さいサイズが8枚入ったスタンドパックがあり、1日に製造するクッキーは大小合わせて650枚ほどです。
親会社と同じ厳格な安全基準のもとで製造されていますが、当初は食品を扱う上での安全意識を一人ひとりに伝えることに苦労したこともあったそう。衛生面への配慮などを支援スタッフが実演しながら繰り返し指導していったと言います。クッキーは工房に併設する売店や近隣企業、区役所での出張販売などで社員が直接販売し、地域とコミュニケーションを図るきっかけにもなっています。


「障がいの有無は関係なく、隣にいて当たり前の存在に」
ファンケルグループの障がい者雇用率は2024年6月1日現在、4.37%です。重要課題として「ダイバーシティとインクルージョンの推進」や「地域社会への貢献」などを掲げ、2030年度までに障がい者雇用率5%達成を目標にしています。簑島修社長は「障がいを持つ人が社内でいきいきと働く姿は健常者にとってインパクトがあります。仕事の中で声をかけあうことで、障がいの有無は関係ないと感じるようになり、今は隣にいて当たり前の存在になってきました。しかし、まだ過渡期だと思います」と話します。ファンケルスマイルを中心に、これからも自立支援を念頭に置いた障がい者雇用を推進していきます。
- 取材先:株式会社ファンケルスマイル
- https://www.fancl.co.jp/smile/index.html