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特集 Work vol.15

未利用野菜を活用。農福連携で干し野菜商品を開発

干し野菜研究家/office k 代表・澤井香予さん

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環境に寄り添い、願いも叶える〝干し野菜〟

規格外の野菜を活用し、福祉事業所のメンバーとともに、洗って刻んで乾燥して…、そうして出来た「干し野菜」を商品化。環境にやさしく、カラダにもやさしい、そして「ともに生きている」地域の仲間たちにもやさしい…。出産後の体調不良をきっかけに、健康的な生活を追求するなか、ある日出会った「干し野菜」に惚れ込み、この干し野菜を通して幸せの循環をめざしている女性がいます。2023年には、「令和5年度 横浜市食の3Rきら星活動賞」も受賞。「干し野菜を通した農福連携」に取り組む、干し野菜研究家・澤井香予さんにインタビューしました。

干し野菜に惚れて2015年に起業。2024年新たな挑戦へ

横浜市金沢区の一角。地元アパートの所有者の協力で2024年6月にオープンさせた「こずみの干し野菜Labo」の入り口。手作りの看板に温かみを感じます。
横浜市金沢区の一角。地元アパートの所有者の協力で2024年6月にオープンさせた「こずみの干し野菜Labo.」の入り口。手作りの看板に温かみを感じます。

干し野菜研究家として起業して9年。2024年6月に横浜市金沢区に「こずみの干し野菜Labo.」を開設(「こずみ」はこの地区の昔の字名)。福祉事業所からの施設外就労を受け入れ、干し野菜の加工作業ができる場所を整えました。地元アパートの所有者の大きな協力もあり実現したというラボ。こじんまりとしたラボ内には、野菜を乾燥する大きな乾燥機が2台、4人も座ればいっぱいになる作業台が1台、作業台には野菜を刻むための包丁やまな板、チョッパー、大きなザルなどが置かれています。

干し野菜を作る工程、それは洗って、刻んで、乾燥させるという単純作業の連続です。干し野菜研究家として活動するなかで、澤井さんには直面している問題が2つありました。1つ目は「未利用野菜に対して乾燥作業が追い付いていかない」こと、そして2つ目は「干し野菜の加工作業の仕事をしたくても、設備がなくて関われない福祉事業所が多い」ことでした。この課題を何とか解消したいと考えた澤井さんは、干し野菜の加工作業をする場所を探していました。多くの協力を得て、アパートの1室に加工作業と乾燥した野菜の袋詰めを製造するラボを開設することができたのです。

協力農家から寄せられた未利用野菜(大きさが不揃いなどで市場へ出せないもの)の処理をし、乾燥できるように刻む作業の様子。市内の福祉事業所の通所メンバーが定期的にラボに訪れ、作業に取り組んでいる。メンバーがそれぞれできる作業に合わせ、分担して加工。一つひとつの作業がとても丁寧で、集中して行っている。
協力農家から寄せられた未利用野菜(大きさが不揃いなどで市場へ出せないもの)の処理をし、乾燥できるように刻む作業の様子。市内の福祉事業所の通所メンバーが定期的にラボに訪れ、作業に取り組んでいる。メンバーがそれぞれできる作業に合わせ、分担して加工。一つひとつの作業がとても丁寧で、集中して行っている。
協力農家から寄せられた未利用野菜(大きさが不揃いなどで市場へ出せないもの)の処理をし、乾燥できるように刻む作業の様子。市内の福祉事業所の通所メンバーが定期的にラボに訪れ、作業に取り組んでいる。メンバーがそれぞれできる作業に合わせ、分担して加工。一つひとつの作業がとても丁寧で、集中して行っている。
刻んだ野菜を乾燥機に入れる就労継続支援B型事業所ウィングワークスのメンバー
https://www.kouyou-yokohama.com/

干し野菜との出会いー。きっかけは出産後の体調不良

干し野菜との出会いが人生を変えたという澤井さん
干し野菜との出会いが人生を変えたという澤井さん

干し野菜との出会いは、出産後に体調を崩して食生活を見直していたときのこと。テレビで見た干し野菜を実際に作ってみて、「こんなに簡単で体に寄り添った美味しいものがあるんだ」と衝撃を受けたそうです。不摂生な美容部員時代を経て、出産を経験。母乳が全く出ず、激痛の乳腺炎を経験…。「自分が食べたものが未来の自分をつくる」ということを改めて実感したそうです。

思い立ったが吉日と干し野菜のお店を開店。しかし、店舗運営はなかなか思ったようにはいかなかったそうです。試行錯誤の末、2015年に「干し野菜研究家」として再スタート。干し野菜を通した商品開発、コンサルタント、セミナー講師など活動領域をどんどんと広げていきました。

〝農福連携〟を推進。障がい者の就労支援にも繋げたい

「令和5年度の横浜市 食の3Rきら星活動賞」を受賞。ともに活動してきた福祉事業所のメンバーとともに、よろこびを分かち合いました。
「令和5年度の横浜市 食の3Rきら星活動賞」を受賞。ともに活動してきた福祉事業所のメンバーとともに、よろこびを分かち合いました。

干し野菜研究家として、笑顔と情熱、行動力で「干し野菜の魅力と可能性」を広めている澤井さん。2023年には、「横浜市食の3Rきら星活動賞」を受賞しました。これは「食品廃棄物の発生抑制、再生利用、啓発などで、他の模範となる取り組みを行い、顕著な功績を挙げている事業所」を横浜市が表彰しているものです。澤井さんの活動は、未利用野菜を使った食品ロス問題の解消に加え、干し野菜に加工することで日持ちもし栄養面でも効果的であること、さらに加工作業には福祉作業所のメンバーに参加してもらうことで「農福連携」を実現していると、大きく評価されました。

このほかにも澤井さんは、商品開発農福コーディネーターとして、横浜市金沢区にある椎茸農園「永島農園」と福祉事業所による農福連携ブランド「Dry delish」や、合同会社グロバースと福祉事業所の農福連携ブランド「YOKOHAMA Dry」、わんぱく自然農園たむそんの野菜を愛川町の作業所で乾燥、袋詰めする農福官連携ブランド「愛川町干し野菜」などにも関わっています。

独自ブランドも立ち上げ。干し野菜を通じて笑顔を拡げる

弾ける笑顔が魅力的な澤井香予さん
弾ける笑顔が魅力的な澤井香予さん

こずみの野菜Labo.の運営費捻出にも繋げようと、独自のブランド「ほしやさい 香予」も同時に立ち上げた澤井さん。薬膳の知恵も入れた干し野菜のおかずの素も商品化。現在通販で販売しています。

干し野菜を様々な角度からアレンジし、食卓を豊かに、食事の準備を時短にする商品が勢ぞろい。健康面にこだわる方へのプレゼントにも最適なラインナップ
干し野菜を様々な角度からアレンジし、食卓を豊かに、食事の準備を時短にする商品が勢ぞろい。健康面にこだわる方へのプレゼントにも最適なラインナップ
商品を使ったメニューも提案
商品を使ったメニューも提案

澤井さんは干し野菜研究家としての目標を以下のように掲げています。

・日本全人口の10%を干し野菜で健康にする。

・廃棄される野菜の10%に新しい命を吹き込む

・障がい者と共にやりがいのある仕事を創造し工賃UP!

未利用野菜を余すことなく干し野菜にし、障がいがある方も共に携わり、流通させるーー。この目標を掲げ、澤井さんは熱量高く活動しています。講演、ワークショップ、プロデュース依頼、受け付けているとのことです。澤井さんのこれからの活動に目が離せません。

取材先:干し野菜研究家 「office k」代表・澤井香予さん
出産時の体調不良がきっかけで「干し野菜」に出会う。以来、干し野菜生活にハマり、干し野菜の魅力を広め続ける日々。毎日毎日、様々な野菜や果物を干し、その魅力を追求中。干し野菜の商品開発、コンサルタント、セミナー講師、オリジナルブランドの販売を展開中。男児2人を育てるシングルマザー。
インスタグラム https://www.instagram.com/kayo16hosiyasai/
Facebook https://www.facebook.com/kayonpil
ほしやさい香予ブランドサイト https://hoshikayo1.base.shop/
公式サイトはこちら▶
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