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特集 Work vol.10

農業・福祉・スポーツの相乗効果で地域課題解決に取り組む

湘南ベルマーレ+社会福祉法人一燈会
ベルファーム

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農業・福祉・スポーツの相乗効果で地域課題解決に取り組む

湘南ベルマーレと社会福祉法人一燈会は「農業・スポーツ・福祉」をテーマに、障がい者の就労支援を継続して行える農業連携事業「ベルファーム」を行っています。
 ベルファームでは障がいを抱える人と、ベルマーレフットサルクラブの選手が一緒に開成町の耕作放棄地を耕し、主に開成弥一芋を生産しています。ベルマーレの選手とともに活動することで商品のブランド力の強化や販路の拡大、より付加価値の高い農作物の生産を目指しています。

ベルマーレの思いと一燈会がめざす障がい者就労支援が農業の新たな形をつくる

小田原市を中心に県西地域で活動する湘南ベルマーレフットサルクラブの事業戦略のひとつである“社会性”。スポーツを通して地域の社会課題解決を行っていきたいと活動する同チームと、同クラブオフィシャルスポンサーでもあり、障がい者就労支援に尽力する一燈会グループが、農地で地域を支えていく「ベルファーム」事業を開成町で立ち上げたのが2022年。きっかけは湘南ベルマーレフットサルクラブの佐藤伸也社長に話した一燈会、山室淳理事長の一言、「もっと障がい者の人を活躍させたい。障がい者就労支援のゴールとして、納税させたい」というフレーズだったといいます。

そこから「納税させるためには」、「生産物を流通にのせるには」、「売れるためには」どうすれば良いかなど検討が始まり、そこに選手も参画して進んでいきました。

農業とスポーツ、福祉をつなげて地域を盛り上げたいと始めた同事業は、高齢化に伴う耕作放棄地の増加や担い手不足などの農業の課題を解決するとともに、障がい者の就労支援を継続的に行える仕組みとなっています。

事業名と同じ「ベルファーム」と名付けた農地で障がい者と湘南ベルマーレフットサルクラブの選手が、共に生産した特産品の里芋「弥一芋」は、地域のスーパーや飲食店などに供給されるだけでなく、サッカーJリーグとフットサルFリーグの試合会場で選手のサインやブロマイド、生産者自ら美味しい食べ方を記したオリジナルレシピを同封するなど、より付加価値を高めた販売もしています。

取り組みの中でさらなる相乗効果も

「ベルファーム」はこのプロジェクトに参画している障がいを抱える人たちも「ベルマーレの一員」なんだという気持ちを抱いてほしい、農業を通じて活躍してほしいと願いを込めて名付けられました。

プロジェクト開始から1年。最初は選手と障がいを抱える人だけで取り組みを始め、収穫した弥一芋の販売を続けることで、購入したファンやサポーターが現れ、さらに食材として仕入れてくれる他のスポンサーも現れました。また、小学生から高校生までの同クラブ育成組織の子どもたちも、収穫や耕作放棄地を耕すことで参加、今ではたくさんの人がかかわってくれています。選手たちも最初は、競技で活躍することを目的に、もっと練習に費やすべきという考えもありましたが、活動を続けていく中で、応援する人が増え、自分が活躍できるフィールドの選択肢が増え、今ではやりがいを感じるなど、実感しているそうです。

佐藤社長は「マイナースポーツの世界ではファンや支援してもらえる人を増やすことは、競技だけでは限界があると思います。領域を飛び越えて様々な活動をすることで、入口は違っても最終的にはフットサルをプレイすること、応援してくれることにつながると思っています」としています。

農産物生産の風景

勝ちにこだわる、競技も、社会貢献活動も

湘南ベルマーレフットサルクラブでは2022年に5か年計画を掲げています。その中で、5年かけてアジアチャンピオンを獲得することを目標としています。活動する地域の会話の中にアジアや世界の話題で盛り上がって欲しいからと、今年は優勝に絡んでいくと話しています。また、同クラブの事業戦略のひとつである「社会性」の部分では、2022年にベルファームをはじめ、社会課題解決事業を10個立ち上げました。2023年には、さらに15個を積み上げ、合計25個のプロジェクトの立ち上げを行っています。これを進め5年をかけて160個の社会課題解決事業を立ち上げ、実現していくといいます。

「クラブが経済的に成り立ち、半分は社会貢献活動にも突き抜けてゆく。これらでアジアチャンピオンを獲れるんだという事を実証していきたい」と佐藤社長。

「ベルファーム」事業はこの1年でたくさんの人がかかわる事業に成長しました。今年度はプロジェクト開始当初とは異なり、スタートから多くの人が参画して、さらに成長していくといいます。

佐藤社長は「農福連携事業は県内でも進められています。各地域にはスポーツクラブが存在しています。ベルファームをモデルケースとして他の地域でも横展開して、神奈川モデルができ、さらに全国に広がってくれれば」と話してくれました。

イノベーションリーグコンテスト2022で大賞を受賞

ベルファーム事業は、スポーツ庁らが主催するイノベーションリーグコンテスト2022で大賞を受賞しました。

同コンテストは、スポーツやスポーツビジネスの可能性を広げる新しい事例、優れた事例をたたえる取り組みです。ベルファーム事業は、スポーツを活用して社会やビジネスに革新を生み出し、スポーツが持つ産業拡張力を最も感じさせる事例として大賞に選ばれています。

取材先:
湘南ベルマーレ+社会福祉法人一燈会
ベルファーム
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