Life
特集 Life vol.9
メタバース空間では誰もが平等。
自由に自己表現、社会参加ができる
神奈川県、白井暁彦さん
メタバース空間では誰もが平等。
自由に自己表現、社会参加ができる
最近、巷で目にする機会も増えてきた「メタバース(仮想空間)」という言葉。「既に楽しんでいる」という人もいれば、「どういうものなんだろう」という人もいるのではないでしょうか。
神奈川県ではメタバースは生きづらさの改善に活用できるのか?をテーマに研究会を立ち上げるとともに、障がいのある人を対象とした「ともいきメタバース講習会」を開催しました。
自身のアバターを作って、デジタルイラストで漫画を作成
かながわ県民センターで8月~10月に全5回にわたって開講された「ともいきメタバース講習会」。第1回の「ともいきメタバース入門」から始まり、第2回は「メタバースでアバターを作ってみよう!」、第3回~第5回は「メタバースでクリエイターになって、発表作品を作ろう!」というテーマで、デジタルハリウッド大学大学院 客員教授の白井暁彦さんが講師を務めました。
全5回の連続した講習会でしたが、1回だけでも参加でき、メタバースがどんなものか分からない人でも、障がいがあっても参加可能。参加者は事務局が用意したiPadとメタバースアプリ「REALITY」を使って、分身である「アバター」を作成しました。第2回以降は作成したアバターとデジタルイラストレーションツールを使って、トレーディングカードや4コマ漫画を作成しました。
誰もが平等に交流し、自己表現できるメタバース
「障がい者って普通にいるよね、アバターだとみんな一緒だよね、という感覚をもった、メタバース・インクルージョン・ネイティブの人が今後、増えていくと思います」と話すのは講座内容をすべて構成し、指導を行った白井さん。メタバースの中では誰もがアバターとして存在していて、笑ったり話したり、歩いたり踊ったりでき、健常者でも障がいのある人でも違いはありません。この講習会には、ストレッチャーの上で寝たきりの人、車いす利用者で左手しか動かせない人、知的障がいがある人など、さまざまな人が参加し、メタバースを楽しむことができました。
また、参加者が講習会を通して徐々に変化していくことにも、白井さんは気付いたそうです。
「最初は緊張した面持ちでしたが、だんだんと打ち解けた表情になっていましたし、”作業”から”表現”になっていったと思いますね」
アバターやイラストを作るために、iPadやアプリを操作するのは”作業”。特に初めて触れるメタバースアプリやイラスト生成AIでは、「何をどうすればいいか」、「見やすくするにはどうすればいいか」という作業にまずは意識が集中します。けれど、その先に「こうしたいという”表現”が出てくるんです」と白井さん。
メタバースが世界を変えるかもしれない
取材した日が3回目の参加だという「あおば」さんは「これからもっとデジタル作品を作りたい」と話し、4回目の参加だという「たろ」さんは「自分がここで学んだことを、作業所に持ち帰って、興味を持ってくれた人たちと共有したい」と話してくれました。さらに「たろ」さんは、「初めはメタバースってこんなもんか、と思っていたけど、これはもしかしたら世界を変えるかもしれないと思い始めました。メタバースを使って社会参加をしていきたいです」とのこと。
「暗い話でも苦しい感情でも、もっと表現していいんだよ」と参加者に声をかけていた白井さん。この講習会を開いた福祉子どもみらい局 共生推進本部室も「メタバースが障がいがある人にとっての社会参加や自己実現のツールになることを願っています」と話します。講習会で制作した作品は、今後メタバース上に開設する美術館で展示される予定で、2024年度以降はメタバース上で障がいがある人同士の交流イベントも計画中。誰もが平等に自己表現のできるメタバースを活用した取り組みに、今後もぜひ注目してください。
- 神奈川県、白井暁彦さん