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特集 Life vol.10
鎌倉初のブランド豚、
鎌倉海藻ポークが
障がい者の活躍の場を創出
神奈川県、鎌倉漁業協同組合と海のSDGsを実行する会
鎌倉初のブランド豚、鎌倉海藻ポークが
障がい者の活躍の場を創出
鎌倉初のブランド豚「鎌倉海藻ポーク」の餌となる海藻だけでなく、海岸のゴミや漂着物も回収する「インクルーシブビーチクリーンwith鎌倉海藻ポーク」が2023年11月1日、材木座海岸で開催されました。
一般的にビーチクリーンと言えば、海岸に捨てられたゴミや漂着物を拾って処理するものですが、今回のビーチクリーンは「鎌倉海藻ポーク」の活動との同時開催でした。
水産・畜産・福祉が連携して誕生したブランド豚
鎌倉海藻ポークとは、通常は捨てられてしまう海藻を飼料にして育てた、鎌倉発のブランド豚のこと。鎌倉市在住の料理家、矢野ふき子さんが「捨てられている海藻で何かできないか」と発案しました。ドングリを食べて育つイベリコ豚のように、栄養価の高い海藻を食べることで、味や肉質に好影響があるのではないか、と考えたそうです。
海藻には漁業権があるため、本来なら一般の人が回収することはできませんが、矢野さんが鎌倉漁業協同組合に趣旨を説明して許可証を出してもらえることに。また、神奈川県畜産技術センターの紹介を受けて厚木市の養豚会社、臼井農産の臼井欽一さんとタッグを組むこともでき、海藻を混ぜた飼料での養豚に乗り出しました。
さらに矢野さんは「海藻を豚の飼料にする工程で、障がいがある人の仕事を生み出す」ことを計画します。海藻を回収する、砂やゴミを丁寧に取り除く、乾燥させる、粉砕するといった作業を、障害福祉サービス事業所に仕事として依頼することにしたのです。
こうして漁業、畜産業、福祉の異業種が連携する仕組みが出来上がり、鎌倉海藻ポークは現在、市内飲食店や小中学校の給食で使用されているほか、会員の方の贈呈品としても提供されるようになりました。
スタート当初は、海藻の回収や処理を担っていたのは1つの障がい福祉サービス事業所だけでしたが、この鎌倉海藻ポークが知られるようになるにつれて増え、2019年には鎌倉漁業協同組合と市内3つの障害福祉サービス事業所が「鎌倉漁業協同組合と海のSDGsを実行する会」を結成。今では結成された組織のメンバーである鎌倉薫風、山崎薫風、虹の子作業所、りりぃふの4つの障がい福祉サービス事業所に加え、わんびぃさん、みちテラス、そして、老人ホームのきしろホームも参加しています。
ビーチクリーンを通じて共生の輪が広がっていく
「最初は障がい者施設だけで始まったのですが、皆さんから協力のお申し出があり、老人ホームも加わりました。それに今回は一般の方々も参加してくれました。こうやって『ともに生きる』の形が広がっていけば嬉しいですね」と矢野さん。
11月1日、「鎌倉漁業協同組合と海のSDGsを実行する会」のメンバーらと共に、共生社会を推進する神奈川県と協業し、「インクルーシブビーチクリーン」を開催しました。
あらゆる世代が一緒にビーチクリーン活動を行うことで、心のバリアフリーや共生社会の理念を普及するとともに、鎌倉の海岸をフィールドとした地域のつながりの輪を広げることを目的とした本イベントには、市内外から107名の参加者が集まりました。
また、今回のインクルーシブビーチクリーンでは、神奈川県立七里ガ浜高等学校のボランティア部の生徒も、校内で洗浄・乾燥を担いました。海岸での清掃作業だけでなく、様々なつながりができています。
「鎌倉漁業協同組合と海のSDGsを実行する会」との共催で、鎌倉市内の障害福祉サービス事業所、老人ホーム、高校生、一般のボランティアなど多くの参加者と一緒に共生の場を創出した神奈川県の担当者は、「ビーチクリーンをしながら、皆さんでコミュニケーションもとってもらえたら」と話しました。
2020年には農林水産省の6次産業化に認定された「鎌倉海藻ポーク」の活動の広がり、今後も要注目です。
- 神奈川県、鎌倉漁業協同組合と海のSDGsを実行する会