Art
特集 Art vol.3
NFT&ブロックチェーンで
「アートに生きる」を実現する
一般社団法人ソーシャルアートラボ
NFT&ブロックチェーンで
「アートに生きる」を実現する
「とても喜んでおられました。創作活動の励みになっているようです」と話すのは、一般社団法人ソーシャルアートラボのファウンダー・代表理事の福室貴雅さん。そして喜んでいたというのは、障がいを抱えるアーティスト。 ソーシャルアートラボでは、障がいがある人や障害福祉サービス事業所のアート作品をNFT(※1)で販売しています。ブロックチェーン(※2)上での取引となるため、無断転売や違法コピーを防げるうえ、二次流通(リセール)以降もアーティストに売上金額の一部が自動的に支払われることが可能になります。 「当法人では現在、30名程度の障がいがあるアーティストが作品をNFT化しています。個人的に作家として登録している方もいれば、障害福祉サービス事業所を介してのNFT化もあります」と福室さん。そして冒頭の言葉、創作活動の励みになっているという言葉に続きます。
- ※1 NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)とは、ブロックチェーンを基盤にして作成された代替不可能なデジタルデータのこと。コピーや模倣がしやすい従来型のデジタルデータと違い、資産的価値を付与できて、インターネット上のプラットフォームで取引され、NFTを売って利益を得ることも可能
- ※2 ブロックチェーンとは情報を記録するデータベース技術の一種で、ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それをチェーン(鎖)のように連結してデータを保管する技術。NFTの場合、ブロックチェーンに記録されている識別情報も踏まえて作品ごとに価値が決まるため、視覚上は同じ作品でも、それぞれ代替不可能な存在として区別される
活動のきっかけはマイクロプラスチックのアクセサリー
2019年、父の死をきっかけに地元の藤沢市に戻った福室さんは、何をしたらいいのかと悶々とする日々を送っていたと言います。そんな中で出合ったのがカエルデザイン合同会社のマイクロプラスチック(海洋プラスチック)で作られたアクセサリー。カエルデザインはマイクロプラスチックを様々な障がいがある仲間たちとアクセサリーにアップサイクルするプロジェクトで、SNSを通して初めてその存在を知った時、福室さんは大きな衝撃を受けたとのこと。
「そのかわいさにビックリしました。これが海のゴミでできてるの? 障がいがある方が作ってるの? って」
その可愛さ、美しさに魅了された福室さんは、「湘南でビーチクリーンして回収したマイクロプラスチックを送らせてもらったら、商品にしてくれますか?」とカエルデザインへ持ち掛け、そこからマイクロプラスチックなどを回収するビーチクリーン活動がスタート。ビーチクリーンを定期的に開催する中、福室さんの中で「もっと直接的に障がい者を支援することはできないのか」という思いが芽生えてきました。
その思いが2021年11月の「ソーシャルアートラボ」設立につながります。
すべての人が平等に「アートに生きる」世界へ
「最近、障がい者アートが注目される機会も増えてきていますよね」と福室さんが言うように、それを銘打った作品展が開かれたり、テーマに据えた映画が好評を博したりしています。
「ただ、障がい者アートって言葉、私は、あんまりしっくりきてないんですよ」と福室さん。
健常者の中でアーティストとしての才能のある人とそうでない人がいるように、障がいを抱える人が全員、アーティストとしての才能を備えているとは限らない、というのが福室さんの持論。
そしてそれは「アートで生きる」、つまり、創作活動によって生計を成り立たせられるか、も同じと福室さんは言います。
「才能のあるなしも、それで生きていけるか(利益が得られるか)も、健常者と障がい者で区別はありません。それでも私がこうしてNFTを利用して障がいがある人たちの支援をしているのは、単純に障がい者支援という意味ともう一つ、”藝術の民主化”を推し進めたいという気持ちからなんです」
民主化という少々、大仰な単語が出てきたところで、よくよくその意図をうかがうと、「芸術的才能がある方はもちろんですが、そういった才能がなくとも創作活動ができる、楽しめる。そんなすべての人に開かれたアートの世界を藝術の民主化だと考えています」とのこと。
誰もが平等に創作活動、アートを楽しめる世界を目指す、それがソーシャルアートラボの根底にあるのです。
NFT販売から多岐に広がっていく活動
ソーシャルアートラボはNFTマーケットプレイスでの作品販売を主軸にしつつ、様々な活動を行ってきました。昨年12月に逗子市で行われた障害者週間のイベントでは、「車椅子ユーザーと考えるユニバーサルデザインワーク」と題したワークショップを開催。メタバース(VRゴーグル)体験会では、子どもから高齢者まで障がいの有無にかかわらずVRの世界を体験してもらったそうです。
また、百貨店での障がい者作品の販売では、障がいのある人にレジスタッフになってもらうなど、健常者、障がい者の区別なく参加。この夏には障がい者も参加する海でのバリアフリービーチバーベキュー、11月には認定NPO法人藤沢市民活動推進機構と共催し、アートイベントを開催する予定です。
ソーシャルアートラボの活動は、このように障がい者作品の支援に限らない広がりを見せています。福室さんはこの活動に対して、資金の問題など様々な課題があることは否定していません。それでも「とにかく喜んでもらうことが何より嬉しいんです」。それがこの活動の原動力と話しています。
ソーシャルアートラボの公式サイトでは、こうした法人活動への寄付を受け付けているほか、「自分も作品を発表したい」「作品をNFT化したい」というアーティストも受け付けています。藝術の民主化にあなたも一歩、足を進めてみませんか。
- 取材先:(一社)ソーシャルアートラボ 公式サイトはこちら